素敵な雨のお話―
その傘は
雨宿りの恋人たちを
元の主からの爽やかな博愛に包んで
恋の1ページのささやかな栞になったのでしょう
雨上がりの偶然―
その歌うたいは
路上パフォーマーの声に誘われ
懐かしい曲を共に歌って
明日への一歩に確かな勇気を授けられたことでしょう
わたしの小雨―
昼下がり無人の墓地
遠に見送った父さんと兄さんに花束を供え
遅ればせの命日を詫びたとき
やっと安堵の時計がわたしを刻み始めたようです
かの地の豪雨―
時に多くの命も希望も押し流し
財産も思い出もふるさとの景色も奪いゆく現実を見せつける
わたしは穏やかな雨の恩恵たちを感謝しつつ
あの痛ましい魂たちの平安を祈るばかりです